院長先生のブログ
子宮内膜症の原因は?
あんまりというか、全く小児科と関係ない話題です。
とはいえ、「Fusobacterium 感染が子宮内膜症の発症を促進する」なんて衝撃的な題名の論文(SCIENCE TRANSLATIONAL MEDICINE,14 Jun 2023, Vol 15, Issue 700:PMID: 37315109)をみかけたら、読まずにいられません。ちなみに、Fusobacterium は口腔内や腸管内の常在菌で、歯周炎やLemierre症候群、大腸癌に関与する菌として有名です。この菌が無菌と思われていた子宮内膜に高頻度に存在したという事実に驚きです。えー!感染症だったの?って感じですw
Abstractだけのざっくりとした紹介となります。興味のある方は購入して、しっかり読んでみましょう。
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本研究では、子宮内膜症の形成におけるFusobacterium の病原性の役割を示した。
女性のコホートにおいて、子宮内膜症の患者の64%は子宮内膜にFusobacterium の浸潤が見られたが、コントロール群では10%未満であった。免疫組織化学的および生化学的解析から、子宮内膜細胞のFusobacterium 感染が起因して、休止状態の線維芽細胞が形質転換増殖因子β(TGF-β)シグナルの活性化により、増殖、接着、移動能力を有するTransgelin(TAGLN)陽性の筋線維芽細胞へと変化することが明らかになった。子宮内膜症の同系マウスモデルにFusobacterium を感染させると、TAGLN陽性の筋線維芽細胞の大幅な増加と子宮内膜症病変の数と重量の増加を引き起こした。さらに、抗菌薬治療は殆どのケースで子宮内膜症の発症を防ぎ、マウスモデルで確立された子宮内膜症病変の数と重量を減少させた。我々のデータはFusobacterium 感染による子宮内膜症の発症機序を支持し、この細菌の除去が子宮内膜症の治療方法となりうることを示唆している。
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これが本当だとすると、近い将来、子宮内膜症が抗菌薬で治療できるようになるかもしれません。
それにしても、小児科以外の分野も偶には読んでみるものですね。
色んな新発見があって面白いです。 (小児科 土谷)