院長先生のブログ
アトピー性皮膚炎の重症度を予測する因子は?
今日は珍しくアレルギー関連の論文を読みました。ちょっと古めですがご容赦ください。
重症アトピー性皮膚炎の関連因子を検討したフィンランドからの論文(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Nov;36(11):2130-2139.)です。
4.79~79.90歳(平均32.08歳)のアトピー性皮膚炎患者502人を対象に、単施設での横断的観察研究を実施しました。疾患の重症度はRajka-Langeland重症度スコアとEASIで評価し、関連する臨床症状も評価しました。発症、親族、アレルギー、その他の併存疾患に関するデータはレトロスペクティブに収集され、血清総IgE値、フィラグリン欠損変異、皮膚バリア障害に関連する遺伝子の機能変異も調査しました。
その結果、重症アトピー性皮膚炎にみられる頻度の高いリスク因子は以下の通りでした。
早期発症(P=0.004, 95%CI:0.000-0.024)
男性(P=0.002, 95%CI:0.000-0.11)
喫煙歴(P=0.012, 95%CI:0.000-0.024)
併存する気管支喘息(P=0.001, 95%CI:0.000-0.011)
手掌の多紋理(palmer hyperlinearity)(P=0.001, 95%CI:0.000-0.011)
手湿疹(P=0.013, 95%CI:0.014-0.059)
接触性アレルギー歴(P=0.042, 95%CI:0.037-0.096)
BMI(P=0.000, 95%CI:0.000-0.011)や血清総IgE値(P<0.000, 95%CI:0.000-0.011)も重症アトピー性皮膚炎でより高い傾向が認められました。
アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、ピーナッツアレルギー、皮膚プリックテスト陽性、毛孔性角化症、単純ヘルペス感染、フィラグリンヌル変異、その他の遺伝子変異では差は認められませんでした。
以上から、フィンランド人のアトピー性皮膚炎患者における、重症度の決定要因は、早期発症、男性、喫煙歴、併存する気管支喘息、手掌の多紋理(palmer hyperlinearity)、手湿疹、接触性アレルギー歴、過体重、血清総IgE高値であると推察されました。
今回の報告におけるリスク因子は国や地域によって変動する可能性もありますが、重症患者の殆どが(85.2%)2歳以前に発症し、軽症患者(69.5%)とは有意差があったとしており、該当する年齢のお子さんを必然的に診察することになる小児科外来では注意しなければなりません。 (小児科 土谷)