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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

long COVIDの病態 -持続感染⑧-

long COVIDの病態について。「持続感染」に関連する論文(Nature volume 612, pages758–763 (2022))です。

 

COVID-19の呼吸器以外の感染負荷やウイルスが消失するまでの時間について、(特に脳において)十分に解明されていません。これに関連して米国NIH等の多施設共同研究が報告されています。COVID-19で死亡した44名の患者の剖検を実施し(うち11名は中枢神経系を広範囲に採取)、急性感染から症状発現後7ヶ月以上までの、脳を含む人体全体のSARS-CoV-2ウイルスの分布、複製、細胞特異性のマッピングと定量化を行いました。

 

その結果、SARS-CoV-2ウイルスは、重症のCOVID-19で死亡した患者を中心に、全身に広く分布することが分かりました。具体的には、感染初期では呼吸器組織に有意に高いウイルス負荷を示しましたが、症状発現後2週間の間に非呼吸器系の複数の部位(心筋,リンパ節,坐骨神経,眼組織,そして硬膜を除く中枢神経のすべての採取部位:下図)でウイルス複製が確認され、14日以降で、27例中14例で少なくとも1つの組織で活発なウイルス複製中に生成されるサブゲノムRNAが検出され、さらに数ヶ月間(症状発現後230日目でも)非呼吸器系組織でウイルス複製が起こる可能性が示されました。

注目すべき点は、改良型Vero E6細胞株(培養細胞)を用いて、13日目の視床から複製能を持つSARS-CoV-2ウイルスを回収しており、SARS-CoV-2ウイルスはヒト脳に感染したのち複製する能力を有することが立証されたことです。

 

以上から、症状出現後230日目でも非呼吸器系組織でSARS-CoV-2ウイルスの複製が生じること、ヒト脳に感染後も独自に複製しうることが示されました。SARS-CoV-2の持続感染は厄介ですね。 (小児科 土谷)

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