院長先生のブログ
Hands – Only CPR -エビデンス-
昨日は「Hands – Only CPR」を紹介しました。
たぶん、「胸を押すだけで本当に大丈夫?」と思う方も多いと思いますので、今日はその根拠について、有名な論文をもとに考察してみましょう。
成人の突然の心停止の大部分は心室細動などの致死的不整脈によるものです。この場合、心停止になる直前まで普通の呼吸をしているので、心停止後数分間は人工呼吸をしなくてもある程度の量の酸素が血液中に残存していることが分かっています。
心停止になる瞬間を目撃された突然の成人の院外心停止に対して、胸骨圧迫と人工呼吸の両方を行う心肺蘇生(CPR)をした場合と、hands-only CPRをした場合とで、心拍再開率や生存率、社会復帰率を比較した研究を紹介します(下図)。その結果、両者に差がない、つまりhands-only CPRが人工呼吸を行う心肺蘇生に劣らないことが証明されています。
そして、ひとつだけ補足します。hands-only CPRの有用性を検証したこの研究の対象は、「成人の、目撃された、突然の心停止」だけです。心停止後時間が経った傷病者や、もともと呼吸の問題で低酸素状態にあり、その結果心停止に陥った傷病者では、血液中の酸素の量がもともと少ないため、換気の必要性が高いことが分かると思います。乳児や小児の心停止は呼吸原性心停止が多く、成人の溺水、窒息なども呼吸原性心停止であるため、このような場合のhands-only CPRの有用性は確立しておらず、人工呼吸も行う従来のCPRの方が望ましいと考えられています。
今日はhands-only CPRの根拠について、簡単に触れました。根拠が分かれば、自信を持って行動に移すことも出来るかもしれません。
でも、やっぱり自信ないな~なんて思う人は、県内各地で開催されている「救命講習会」を一度受講してみると良いと思います。間違いなく、自身つきますよ~♡ (小児科 土谷)