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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心停止の判断は難しい

心停止は心臓から有効な心拍出がない状態であることから、これまで頸動脈や上腕動脈での脈拍の消失を確認することが心停止の判断に使われてきました。しかし、脈拍の評価は容易ではなく、信頼性に欠けるということを知っておきましょう!


今回は脈拍の触知が心停止の判断基準として妥当かを問いかけた面白い論文(Resuscitation. 1996 Dec;33(2):107-16.)をご紹介します。このEberleらの論文によれば、存在するはずの脈拍を10秒未満で「脈あり」と正しく判断できた率は15%であったのに対し、存在しない脈拍を10秒未満で「脈なし」と正しく判断できた率は僅か2%に過ぎなかったとされています。

また、存在しない脈拍を10秒未満で「脈なし」と正しく判断できた割合は、存在するはずの脈拍を10秒未満で「脈あり」と正しく判断できた割合よりも有意に低く、いかに脈なしの心停止であることを判断することが難しいかが分かります。他の論文を読み解いてみても、心停止を10秒未満で「脈なし」と判断できた割合は14%程度に過ぎないとされており、脈拍触知が心停止と判断する便利ツールとして使いにくいのは明白です。

 

このため、不慣れな市民救助者は脈拍触知を行うべきではないとされています。トレーニングを積んだ医療従事者や心肺蘇生に熟練した救助者であれば呼吸の確認と同時に頸動脈拍動の有無を確認しても構いませんが、脈拍の有無の判断に自信が持てない場合は脈拍触知にこだわらず、呼吸をしていない・死戦期呼吸であれば心停止と判断して速やかにCPRを開始しましょう!


ちなみに心停止か判断に迷い、非心停止の傷病者にCPRを実施したとしても、適切なCPRであれば臨床的に問題となる有害事象(内臓損傷など)は発生しないとされており(Circulation. 2010;121:91-97)、ガイドライン上でも、心停止を疑ったら躊躇なく胸骨圧迫をするよう推奨されています。 (小児科 土谷)

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