院長先生のブログ
子どもが頭をぶつけました
外来をしていると、ときどき「頭をぶつけた」お子さんが来院されますが、小児の外傷性脳損傷(TBI)によって、どの程度の確率で受傷後にてんかんを発症するのか?そのリスク因子は何か?などは、残念ながら、まだよくわかっていないのです。
そこで今日は小児の外傷性脳損傷(TBI)における外傷後てんかんPTEの発生率を評価した論文(Epilepsia. 2022;63:2802–2812.)を紹介します。
今回のシステマティックレビューでは、小児TBIにおける外傷後てんかん(PTE)の発生率を評価したRCTやコホート研究を対象に評価しています。
〔結果〕
○小児TBI後のPTEの全体的な発生率は10%(95%信頼区間[CI]= 5.9%–15%)でした。
○受傷後の発作(CIR= 7.28)、重度のTBI(CIR=1.81)、および頭蓋内出血(CIR=1.60)はPTEのリスクとなりましたが、性別、手術介入などはPTEのリスクとなりませんでした。
以上から、「軽くぶつけた」くらいで大ごとになることはないようです。
受傷による頭蓋骨骨折や頭蓋内出血、意識障害の遷延、受傷後の痙攣発作などがなければ、受傷後に「てんかん」を発症するリスクは低いと考えて良いでしょう。 (小児科 土谷)