院長先生のブログ
COVID-19 急性期合併症⑮
今回は昨日取り上げた「1)ウイルスの脳への直接感染」の続きの話題です。
これまでにSARS-CoV-2ウイルスの脳への感染能力が複数の方法により確認されています(J Exp Med (2021) 218 (3): e20202135.)。
米国でSARS-CoV-2の脳への感染能力を調べるために3つの実験が行われました。
①ヒトの脳オルガノイド(いわゆるミニ脳:人工的に作られたヒト脳に似る3次元構造体で、一般にヒトiPS細胞から作成される)を用いて、感染した神経細胞と隣接する神経細胞の代謝変化(感染の明確な証拠)を確認しました。さらに、ACE2を抗体でブロックするか、患者髄液を投与することで神経細胞の感染を防げることも確認しました。
②ヒトACE2を過剰発現させたマウスを使って、経鼻的にSARS-CoV-2を感染させると、7日目には脳の広範囲(小脳を除く)に感染が見られることを確認しました。
③患者剖検脳において、大脳皮質神経細胞にSARS-CoV-2が検出され、免疫細胞の浸潤が抑制されている病理所見を確認しました。
以上の3つの研究結果はSARS-CoV-2が直接、脳に感染する能力を示すものとされています。 (小児科 土谷)