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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

COVID-19 急性期合併症㉑

昨日に引き続き、急性期の神経合併症が生じる機序のうち「3)血管脳関門の破綻」に関連した論文(Nat Neurosci 24, 1522–1533 (2021).(doi.org/10.1038/s41593-021-00926-1))を紹介します。

 

SARS-CoV-2ウイルスがNFκB essential modulator(NEMO)を分解することで、小血管障害と血液脳関門の破綻を引き起こすことを報告した論文です。

COVID-19感染者や感染動物モデル(マウス,ハムスター)の脳では、基底膜のない血管,いわゆる「ひも状血管(string vessel)」が増加していることが明らかになりました。下図の矢頭がひも状血管。

このひも状血管は感染によって障害を受けた毛細血管の遺残でした。

また、血管内皮細胞がウイルス感染していること、SARS-CoV-2ウイルスの主要プロテアーゼ(main protease; Mpro)が免疫反応において中心的役割を果たす転写因子のひとつであるNFκBの必須モジュレーターNEMO(NFκB essential modulator)を5カ所のグルタミン部位で切断することが明らかになりました。感染した血管内皮細胞ではNFκB下流のIL1βの発現が低下していました(これによりcaspaseを抑制できずTNFなどが上昇)。ウイルスのMproがNEMOを切断することで、血管内皮細胞死や「ひも状血管」の形成をもたらすことが示されました。

 

NEMOはアポトーシスや第3の細胞死と呼ばれるネクロプトーシスを防ぐことが知られています。実際、NEMOの分解によりネクロプトーシスと関連するRIPK(receptor-interacting protein kinase)3カスケードの活性化がもたらされることも分かりました。そして、RIPK3を欠損させると血管内皮細胞でNEMO を欠損させたマウスで認められる「ひも状血管」形成や血液脳関門の破綻が阻止されました。さらにRIPK1阻害剤でウイルスによる上記の小血管障害が抑制されたことが分かりました。ウイルスMproはNEMOを分解することで、小血管障害や血液脳関門(BBB)の破綻を引き起こすものの、これらはRIPK阻害剤によって抑制することが出来ることが分かりました。

SARS-CoV-2ウイルスはNEMOを分解することで小血管障害と血液脳関門の破綻を引き起こすみたいですね。 (小児科 土谷)

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