院長先生のブログ
long COVIDの病態 -持続感染⑮-
long COVIDの病態「持続感染」に関する論文(medRxiv 2023.07.27.23293177; doi.org/10.1101/2023.07.27.23293177)です。
アメリカからの研究です。
感染後27日~910日の24人に対して、活性化Tリンパ球を標識する新規トレーサー[18F]F-AraGを用いたPETイメージングを行いました。PASC群におけるトレーサー取り込みは対照群と比較して、脳幹、脊髄、骨髄、鼻咽頭および肺門リンパ組織、心肺組織、腸管壁を含む多くの解剖学的領域で有意に高いことが分かりました。
Tリンパ球活性化は急性期であるほど顕著でしたが、感染から2.5年後までトレーサーの取り込み増加が認められました。脊髄および腸管壁におけるTリンパ球活性化はLong COVID症状の存在と関連していました。さらに肺組織におけるトレーサー取り込みは肺症状が持続する患者で高いことが分かりました。
これらの組織におけるTリンパ球活性化はPASCを発症していない多くの感染者でも観察されました。PASC患者より大腸組織を採取してin situハイブリダイゼーションを行った結果、発症後158~676日経過した全患者で、直腸S状結腸の固有層組織でSARS-CoV-2 RNAが同定され、ウイルスの持続感染が長期にわたる免疫調節異常を引き起こす可能性が示唆されました。
以上から、PASC(Long COVID)患者では約2年にわたって大腸におけるSARS-CoV-2ウイルスの持続感染と免疫調節異常が生じていることが分かりました。SARS-CoV-2ウイルスの持続感染説を支持する論文でしたw (小児科 土谷)