long COVIDの病態に神経炎症が関与しているかどうかを検討した論文（J Neuroinflammation 20, 179 (2023).（doi.org/10.1186/s12974-023-02857-z））を紹介します。

SARS-CoV-2感染後の神経炎症の過程を調べるために、SARS-CoV-2ウイルスに感染させたアカゲザル4頭を[18F]DPA714を用いた18-kDa translocator protein（TSPO；TSPOの脳におけるシグナル増加は多発性硬化症やアルツハイマー病のような疾患で認められる）PETで7週間モニターしました。

その結果、感染後2日目からすべてのサルの脳全体でトレーサーの取り込みが増加し、感染後30日目までで約2倍に増加していました（SARS-CoV-2感染後に活発な神経炎症が生じていたということ）。

以上のアカゲザルの感染モデルの実験から、SARS-CoV-2に神経向性（neurotropism）があることが分かりました。

ヒトに感染した場合も、脳に神経炎症が生じることをある程度は覚悟しなければならないみたいです。未熟な小児に感染した場合、脳への神経炎症の影響が少なくて済むことを願うばかりです。　（小児科　土谷）