院長先生のブログ
乳幼児期における親との食器共有について
先日の外来でお子さんとの食器の共有について聞かれることがありました。
これに関しては2023年8月に日本口腔衛生学会が公式サイトで意見を公表しているので、是非ご覧になってください。
声明/提言/意見・回答|日本口腔衛生学会 (kokuhoken.or.jp)
statement_20230901.pdf (kokuhoken.or.jp)
親からの口腔細菌感染は食器の共有の前から起こっている
一般的に、乳幼児と保護者との食器共有は離乳食開始時期にあたる生後5-6ヶ月頃から始まることが多いようです。最近の研究(mBio 2022, 13(1):e0345221.)で、生後 4 か月に母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認されているので、それ以前から親から子どもへの口腔内細菌は感染していることになります(日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触するため)。
食器の共有に気を付けていても、子どものう蝕に差はなかった
う蝕に関連する複数の要因を調べた日本の研究(Caries Res 2011, 45(3):281-286.)では、3歳児において親との食器共有とう蝕との関連性は認められていません。う蝕は砂糖摂取や歯みがきなど様々な要因で起こることが理由として考えられています。
以上から、食器を共有しないことで齲歯予防できるという説の科学的根拠は必ずしも高いものではないようです(食器共有はあまり気にしなくて良い)。
それよりも、子どもの齲歯予防策としては、砂糖の摂取を控えること、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去すること、フッ化物配合歯磨き剤を利用することの方が良いようです。 (小児科 土谷)