院長先生のブログ
はひふへほ

誤嚥事故はこれまでにも何度か発生しているのは皆様もご存じの通りです。
今回はウズラの卵でした。
給食の「ウズラの卵」詰まらせ… “窒息”で小1男児が死亡 縦3cm・横2cmほどでカットされずに提供 福岡・みやま市(FNNプライムオンライン) – Yahoo!ニュース
これほどまでに繰り返される誤嚥事故ですが、残念ながら、誤嚥の瞬間の科学は十分に解明されていません。
先日出かけた長岡市内のレストランでも元気なお子ちゃま達が楽しそうに夕食をとっていましたが、その様子を観察していて、学童期前後の子どもたち特有の「食べながら喋る」という行動にも誤嚥発生のメカニズムの一端があるのでは?と思いました。
日本語の吸気音の音声分析によると、発声の大部分は呼気時に発せられ、吸気時の発声は日本語の場合では感動詞に多く、また「あっ」などや笑いの時に特徴的に発生することも分かっています(言語学論叢 オンライン版第 3 号 (通巻 29 号 2010)pp. 156-173)。
『言語学論叢』(オンライン版)総目次 – 筑波大学一般言語学研究室 (tsukuba.ac.jp)
友達と食べるお昼の時間は楽しい時間に違いありません。楽しくお喋りしたり、友達同士で戯れあいながら食べることもあるでしょう。でも、口に頬張っていることを忘れて吸気発生となる感嘆詞や笑いが生じてしまったら、誤嚥事故に繋がってしまうかもしれません。
「食事の時は静かに」「喋りながら食べてはいけません」「遊びながら食べてはいけません」
僕が未だ小さな子どもの頃、両親からよく注意された「食事のマナーを教える」言葉です。多分、今もそうだと思います。
先に述べた呼吸、特に吸気の安定を考えると、きちんと子どもに教えていかなければならない大切なマナーなんだと思います。
幼児・学童の安全のために、乳児の誤嚥とは違うアプローチが必要なのかもしれません。
(子ども達に提供する食材などへの配慮が必要であることに間違いありませんが、こういう点を軽視して、ウズラの卵などの食材だけ制限しても、多分同様の事故は劇的に減らないと思います)
事故予防には3つのEが重要です。Education(教育)、Environment(環境整備、製品開発)、Enforcement(法制化)です。子どもが安全な環境を追求することに留まらず、子どもへの教育もきちんと行いましょう。
最後に、小学生の誤嚥事故の予防に対して、Safe Kids Japanが「はひふへほ」を推奨しているので紹介します。
は:早食いはしない
ひ:ひと口でほおばらない
ふ:ふざけない
へ:ぺちゃくちゃしゃべらない
ほ:ほうり上げて食べない
誤嚥や窒息は人類が「言語」という高等コミュニケーション能力を得るために引き換えにした欠点です(他の動物は気道と食道の構造上、誤嚥しない)。
誤嚥や窒息事故は、発達途上の子ども達に「いつ、誰にでも、起きても不思議はない」事故だということを認識して、予防を心がけていきましょう! (小児科 土谷)