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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

乳児へのオセルタミビルの効果

もう5月ですが、インフルエンザをまだ外来で見かけます。それにちなんで、インフルエンザに罹患した乳児に対するオセルタミビル(商品名:タミフル)の効果について検討したフィンランドからの論文(Influenza Other Respir Viruses. 2021 Sep;15(5):618-624.)です。今更感がありますが、地味にこの年齢層のインフルエンザ患者に対する治療の有効性を調べたものは少ないため、少し古い論文ですが紹介します。

方法です。前向き研究で、431人の新生児を登録して、最初に迎えるインフルエンザシーズン(2017年9月~2018年6月)に追跡調査を実施しました。インフルエンザに罹患した乳児に対して、短期間の間に再検査を実施し、ウイルス量測定のために各訪問時に鼻咽頭検体を採取しています。症状出現が発症から48時間以内であったすべての乳児に対して、オセルタミビルが投与され、オセルタミビル投与時の乳児の年齢は生後4.3~10.9か月(平均生後7.6か月)でした。投与後、保護者が毎日症状日誌を記載しています。

その結果、A型インフルエンザに罹患した23人の平均総罹病時間は、オセルタミビルの投与を受けた乳児が82.1時間で、未投与の乳児は253.5時間でした(p=0.0003)。

B型インフルエンザでは、それぞれ110時間と173.9時間でした(p=0.03)

論文中にあったオセルタミビル投与の有無によるインフルエンザ症状合計スコアの推移を示します。緑色のボックスは群間差が統計的に有意であった時間帯です(図中のMは朝、Eは夕方を意味しています)。
A:A型インフルエンザの乳児
A型インフルエンザでは治療開始後3日目から11日目の全ての時点において、オセルタミビル投与投与群の方が症状の総点数が有意に少なかった模様

B:B型インフルエンザの乳児

C:A型またはB型インフルエンザ

また、ウイルス抗原濃度はA型・B型ともに、オセルタミビル投与開始後1-2日で急速に減少しました。

有害事象として、オセルタミビル投与中に嘔吐が48.4%に認められています。

以上から、インフルエンザに罹患した乳児に対するオセルタミビル投与は、症状の持続時間と重症度を短縮させ、鼻咽頭分泌物中のウイルス量を速やかに減少させたことが分かりました。オセルタミビルの臨床効果はB型よりA型インフルエンザに対しての方が高いようで、我々の実際の感覚と合致する結果でした。

 

まだ新潟県内でもインフルエンザを見かけます。周囲の感染症流行状況には十分お気をつけください。 (小児科 土谷)

 

 

 

 

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