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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

「3つのH」を忘れずに

5月になり、これからの季節は徐々に気温も温かくなるので、過ごしやすい季節であるのと同時に、体を動かすにも良い季節だと思っています。

しかし、この時期、実は注意が必要なのです。
日本スポーツ振興センターのデータを見ると、学校における運動(スポーツ)中の事故は5月に最も多く発生しています(下図;2005~2021年度)。

5月に事故が多く発生する理由として、運動の強さが強まる時期、急に暑くなる時期等、さまざまなリスクが重なるタイミングであることが指摘されています。

そこで、今回はスポーツ中に起こり得る事故を防ぐために必要な知識について簡単に説明します。

スポーツ事故の大部分を占める「3つのH

先に触れた日本スポーツ振興センターのデータを見ると、学校で発生する運動中の事故のうち、死亡事故の原因を見てみると、その多くが「心臓系突然死」、「頭部外傷/頚髄損傷」、「熱中症」で亡くなっていることが分かっています。心停止など心臓系の事故(Heart)、頭や首のけが(Head)、熱中症(Heat)の「3つのH」で、「3つのH」はスポーツ中に起きる重大事故の約7~8割を占めているのです。

 

「3つのH」の対策について簡単にまとめます。

 

  1. 心停止など心臓系の事故(Heart)
    迷ったらAEDを使用する。AEDの場所も日頃から確認しておこう:学校内でのAED設置率は100%に近いですが、学外に出た途端AEDの場所が分からず、対応が困難になる場合があります。校外で運動する場合は、AEDが設置されている場所なのか、AEDがなければ持参する必要性も含めて事前に検討しておく必要があります。そして、学外で119番通報を行った場合、普段の練習場所ではないため、自分たちの場所や現場までのルートを上手に伝えることが出来ない場合があります。もしもの時に備えて、あらかじめシミュレーションしておくことも必要です。
    運動後も要注意!クールダウンを忘れずに:「3つのH」の中で最も多い「心臓系突然死」の特徴をAIで分析したところ、体育や部活動中の事故の特徴として、「走る」「ランニング”」「持久走」といったキーワードが浮かび上がってきました。そして、持久走で亡くなった子どもの約3割は、走っている最中ではなく、「走り終わった後」や「休憩中」に倒れていたことも分かっています。
    長距離を走ることは、子どもにとって強い負荷になります。運動をやめた直後は、急激な脈拍や血圧の変化が起こる可能性があるため、運動後も1時間程度は子どもの様子をよく観察しましょう。
  2. 頭や首のけが(Head)
    脳震盪を疑ったら、ただちに運動中止する/子どもを一人にしない:頭を打った直後に亡くなってしまう事故だけでなく、頭を打った後も運動を続け、しばらくしてから亡くなってしまった事故も報告されています。脳震盪の疑いがあるときはすぐに運動を中止させ、子どもを一人にせずきちんと様子を観察しましょう。脳震盪に対する正しい知識をつけることが大切です。
    復帰は段階的に行うこと:練習再開前に予防トレーニングを行うこと、段階的に運動を再開することが大切です。
  3. 熱中症(Heat)
    暑さに慣れる期間を作ろう。休み明けは要注意!:米国の研究で、長期の休み明けに練習を再開した際の初日と2日目が熱中症をおこすリスクが高いことがわかっています。暑さという負荷と、休み明けから急に運動をするという負荷の2つの負荷があるためで、段階的に運動量や運動強度を上げていくことが必要です。
    すぐ冷却!アイスバス・全身にアイスタオル・全身に冷水をかける:症状が出た直後の応急処置が不十分だったとみられる例が少なくないため、適切な冷却処置を実施する必要があります。よく知られている、脇などをアイスパックで冷やす方法は皮膚との接触面積が小さすぎるため、冷却効果が低いとされています(Exerc Sport Sci Rev. 2007 Jul;35(3):141-9.)。確実に体温を下げるために最も効果的な処置は、氷水の風呂(アイスバス)を使用することですが、実施することが難しい場合は日陰で全身に冷水をかけて風を送る、冷水に浸したアイスタオルを全身に巻いて冷却する(アイスタオルは1~2分ごとに交換する)ことで代替が可能です。

 

日本スポーツ振興センターは、学校等における事故防止調査研究委員会を組織し、その結果をまとめ、HP上で情報提供を行っています。Web(https://www.jpnsport.go.jp/anzen/anzen_school/bousi_kenkyu/tabid/337/Default.aspx#youho)で閲覧可能で、関連する各種ハンドブックも無料で入手可能なので、スポーツ事故に関連する内容に興味が沸いた方はぜひご覧になって下さい! 

 

これから春の運動会シーズンを迎えます。子どもたちには、事故を起こさず、楽しい学校生活を送って欲しいものですね (小児科 土谷)

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