院長先生のブログ
絵画にみるBabinski sign
美術館にはよく行くので、せっかくなので絵画と小児科ネタで関連するものがないか探してみました。
こんなマニアックな論文無いだろうと思っていたら、ありました!さすが、安定のBMJ クリスマス特集ですね(笑)!
紹介する論文は19の画家のルネサンス期の乳児キリストの絵画302個(1400-1550年)のうち、Babinski signがどれくらい描かれているかを調べた観察研究です(BMJ. 2020 Dec 10;371:m4556. doi: 10.1136/bmj.m4556.)。
その結果、90個(30%)の絵画でBabinski signが描かれており、そのうち足底刺激は53%で描かれていました! ルネサンス期の絵画は「写実性」が特徴なので、小児期のキリスト画の多くに見たまんまBaninski signが描かれていたようです。
ちなみに、Babinski signとは「足底部外側を刺激すると母指が背屈し他の指も開く現象」のことで、成人では錐体路障害がある際に確認できますが、生後3-4ヶ月くらいまでの乳児は錐体路が十分に発達していないため、足底を刺激したりすると観察することができます。上図の写真でも「ぐいーん」と伸びているのが分かると思いますw
なお、画家はFlemish・Rhenish・Italianの3つの流派に分かれていましたが、Flemish/RhenishではBabinski signが描かれていることが多く、Italianでは少ないという結果でした。
著者らはFlemish/Rhenish派の画家たちが細部を描きたい一方で、Italianの画家たちは人体の美しさを理想化する傾向があったためBaniski signを描かなかったのではないかと考察しています。
それにしても、毎回面白いネタを提供してくれるBMJ。今年の特集も楽しみです!(小児科 土谷)