院長先生のブログ
小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方
日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会から最新の「小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」について声明が出されています(2023年6月9日付)。
小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)
(以下、一部を抜粋)
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COVID-19対策が緩和されつつある社会情勢を受けて、日本小児科学会では、国内の小児に対するワクチン接種の意義について検討しました。
その結果、国内小児に対するCOVID-19の脅威は依然として存在することから、これを予防する手段としてのワクチン接種については、日本小児科学会としての推奨は変わらず、生後6か月~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を推奨します。
≪理由≫
①WHOの指針は、自然感染とワクチン接種によって多くの人がSARS-CoV-2に対する免疫を獲得したことを受け、医療資源の最適な分配について検討し、重症化のリスクが高い者へのワクチン接種が優先されるように提言を行ったものです。その上で、同指針では国ごとに疾病負荷、費用対効果、機会費用(opportunity cost)を照らし合わせ方針を検討すべきとしています。なお、小児や思春期小児に対するワクチン接種は有効かつ安全と記載されています
②5都道府県の一般住民(成人)を対象とした抗体保有率調査が2023年2月3日~3月4日にかけて行われ、自然感染を意味する抗N抗体の保有率は32.1%と報告されました。小児の正確な感染率は不明ですが、現時点でも多くの小児が未罹患であることが想定されます。一方、2021年11月時点で世界人口の4割が既に感染したと推計され、それ以降に行われた各国の血清学的調査からも、大半の方が自然感染したことが示唆されており、国内の状況とは大きく異なることに留意が必要です。
③日本人小児のSARS-CoV2感染者の中で、稀ではありますが一定数は急性脳症や心筋炎を発症しており、その多くが後遺症を残していること、死亡に至った症例もいることが確認されています。更に、感染者の一部には発症後1か月以上にわたり症状を訴える方もいます。
④小児に対するワクチン接種には、発症予防や重症化(入院)予防の効果があることが複数の報告で確認されています。また有害事象は国内では副反応疑い報告としてモニタリングされ、重大な事象は慎重に検討されていますが、現在までのところ接種推奨に影響を与える重篤な副反応はないと判断されています。
今後、感染対策が緩和される中、多くの小児感染者が発生することが予想され、重症化を予防する手段としてワクチン接種は引き続き重要と考えます。接種に伴う利益は副反応等の不利益を上回ると現時点では考えられ、引き続き小児への接種を推奨します。
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日本小児科学会は、引き続き小児へのワクチン接種を推奨しています。
日本感染症学会COVID-19ワクチンの推奨事項も併せてご確認ください。(小児科 土谷)