院長先生のブログ
HPVワクチンの有効性(国内編)
せっかくなので、今朝は、昨日に引き続いてHPVワクチンの有効性に関するデータをいくつか紹介します。
≪新潟からの報告≫
1993年4月~1997年3月に出生し住民基本検診として2014~2016年に子宮頸がん検診を受診した20~22歳の女性を対象として、自治体データとの照合により、HPVワクチン接種の有無とワクチンの予防対象となるHPV16/18型、それ以外のがん化ハイリスクHPV型の感染率を調べ、HPV感染に対する予防効果について検討した論文です(J Infect Dis. 2019 Jan 9;219(3):382-390. doi: 10.1093/infdis/jiy516.)。
過去の性交渉パートナーの数と出生年で調整した結果、16/18型に対する感染予防効果は93.9%、31/45/52型に対する感染予防効果は67.7%で、統計学的に有意なものでした。
≪日本対がん協会からの報告≫
20~29歳の子宮頸がん検診結果から、HPVワクチンを1回でも接種している集団と接種していない集団を比較すると、組織診断結果での中等度異形成以上の病変の発生リスクは76%減少、高度異形成以上の病変は91%減少という高い有効性が証明されました(BMC Infect Dis. 2020 Nov 5;20(1):808. doi: 10.1186/s12879-020-05513-6.)。
≪その他≫
31自治体からのデータを取得して実施された20~24歳の女性を対象とした症例対照研究(Cancer Sci. 2021 Feb;112(2):839-846. doi: 10.1111/cas.14682. Epub 2020 Dec 11.)においても、組織診における高度異形成以上の病変のリスクは、HPVワクチン接種群では未接種群と比較して80.9%減少していました。さらに、浸潤がんを発生した女性は全員HPVワクチン未接種であったと報告されています。
以上のように、日本国内でもHPVワクチンの有効性が証明され始めています。
女性のがん予防という点で、これ以上国際社会に後れをとらないようにするために、日本国内のHPVワクチン接種率を少しでも改善する必要があります。子宮頸がんの予防について、一度ご家庭内でも話し合ってみてはいかがでしょうか。 (小児科 土谷)