院長先生のブログ
吸入は量より質です②
昨日に引き続いて吸入量法に関する話題で、泣いて嫌がる子どもを無理矢理押さえつけて吸入させてもあまり意味は無いということです。
啼泣時に吸入させると、薬剤の大部分が咽頭後壁に付着してしまい、唾液の嚥下とともに胃に流れ込むことが分かっています(Ann Allergy.1990;64:383-7.)。泣いている子どもに必死に吸入させても、薬剤は気道に届かないのです。
《吸入薬剤の体内分布》
A:スペーサーを用いてマスクを少し離して、静かに吸入させた
B:ネブライザーを用いてマスクを少し離して、静かに吸入させた
→ マスクを離すと殆ど吸入されない
C:スペーサーを用いてマスクを密着させたが、吸入中に啼泣した
D:ネブライザーを用いてマスクを密着させたが、吸入中に啼泣した
→ 吸入中に泣いてしまうと、殆ど胃に流れてしまう
EF:スペーサーを用いてマスクを密着させ、静かに吸入させた
GH:ネブライザーを用いてマスクを密着させ、静かに吸入させた
→ マスクを密着し、泣くことなく吸入できると、気道全体に薬剤が行き渡る
図はRespir Care. 2015 Jun;60(6):894-914; discussion 914-6. doi: 10.4187/respcare.04137.より抜粋
やはり、吸入は量より質だと思います。
吸入させる薬剤の多少よりも、マスクをきちんとフィットさせ、子どもを泣かせないで吸入出来るように最大限努力することが大事です。 (小児科 土谷)