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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

Hands – Only CPR -補足-

Hands – Only CPRについてです。

昨日のブログでも触れましたが、「hands-only CPRが小児に有効なのか?」について説明します。

 

この疑問を解決するために、その道では有名な論文(Lancet 2010; 375: 1347–54)を紹介します。小児の院外心停止に対してHands only CPRではなく、人工呼吸を組み合わせた従来の心肺蘇生(CPR)が大事だよ!と言う事実を初めて示した論文です。
 検討方法は小児の院外心停止例に対して、その場に居合わせたバイスタンダーによる処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来型CPRと胸部圧迫のみのCPR(hands-only CPR)の効果を比較する地域住民ベースのプロスペクティブなコホート試験です。院外心停止をきたした17歳以下の小児5170例が登録され、年齢、心停止の原因、目撃者の有無、CPRの種別などが検討されました。プライマリエンドポイントは、院外心停止後1ヵ月の時点における神経学的予後としています(下図)。

結果を簡単に示します。全心停止例のうち、71%が非心原性、29%は心原性であり、バイスタンダーによって、全心停止の30%に人工呼吸を併用する従来型CPRが施行され、17%は胸部圧迫のみのCPRが実施されていました。
 CPRの有無別の解析では、良好な神経学的予後の割合は、バイスタンダーCPRを受けた小児が4.5%と、CPRを受けなかった小児の1.9%であり、バイスタンダーCPRを受けた群はバイスタンダーにCPRを受けなかった群に比べ有意に予後が良好でした(補正OR:2.59、95%CI:1.81~3.71)。非心原性心停止例の良好な神経学的予後率は、バイスタンダーによるCPR施行例が5.1%と、CPR非施行例の1.5%であり、バイスタンダーCPRを受けた群はバイスタンダーにCPRを受けなかった群に比べ有意に予後が良好でした(補正OR:4.17、95%CI:2.37~7.32)。
 CPRの種別の解析では、非心原性心停止の群では従来型CPRの良好な予後率は7.2%と、胸部圧迫単独CPRの1.6%に比べ有意に神経学的予後が優れていました(補正OR:5.54、95%CI:2.52~16.99)。一方、心原性心停止では従来のCPRとHands-Onlyの効果は同等でした。
 要するに、小児の心停止例ではCPRをされれば生存率は約2倍(Odds比:2.5)で、非心原性心停止では従来のCPRの方が約5倍予後が良好という訳です。
 これらの結果から、院外の非心原性心停止の小児例に対して、バイスタンダーはhands-only CPRではなく、胸部圧迫に人工呼吸を併用した従来型のCPRを行うべきだと結論付けられています。

 

ということで、今回はHands-Only CPRの補足でした。

成人の緊急事態でも、現場で行動に移せる人は多くはありません。まして小児例では尚更です。

いざというときに備えて、知識の確認とトレーニングを忘れずに!ですね。 (小児科 土谷)

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