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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

Syncytia

これまでlong COVIDの病態、なかでも「持続感染」について取り上げてきましたが、この持続感染がどのように神経障害を引き起こすかは十分解明されていないのが現状です。

 

今日はその神経障害を起こすメカニズムに関する論文(Sci Adv. 2023 Jun 9;9(23):eadg2248.)を紹介します。これまでにSARS-CoV-2ウイルスが特定の細胞同士を融合させる(Syncytia:シンシティア)可能性が指摘されていましたが、このシンシティアが脳内で生じるかを検討した研究です。

 

遺伝子組換えで赤もしくは緑の蛍光を発するマウス神経細胞を培養し、SARS-CoV-2ウイルスに感染させると融合し、黄色を示す細胞が観察されました。マウスおよびヒト脳オルガノイド(ミニ脳)を用いた実験でも、ニューロン間およびニューロンとグリア間の融合が観察されました。融合は細胞体のみでなく、樹状突起や軸索で主に生じていました。

また、通常の場合、神経細胞は独立して発火し信号を伝達するが、融合した神経細胞の90%は同時に発火し、10%は活動しませんでした(脳細胞の融合により機能不全をきたす!)。

さらにスパイク蛋白を発現するように神経細胞を操作すると、ACE2を発現している細胞とのみ融合が生じました。つまり、感染細胞に発現するスパイク蛋白が他の細胞上のACE2に結合し融合を誘導する可能性が考えられました。

 

以上から、SARS-CoV-2ウイルス感染は、神経細胞同士を融合させて機能障害を引き起こすことで、ブレインフォグや認知症をもたらす可能性があることが分かりました。今後の検証が待たれますね。。 (小児科 土谷)

 

 

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