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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

飛行機内での急変の原因は?

「お医者様はいらっしゃいますか」

出張や学会で公共交通機関を利用しているとき、ときどき、このアナウンスを耳にすることがあります。僕の場合は、出張では電車を利用することが多いので、今まで遭遇したことがあるのは殆どがJRですけど。

これに関連して、(移動手段は電車ではありませんが)飛行機で飛行中の医学的緊急事態に関する論文(N Engl J Med 2013;368:2075-83.)を紹介します。

 

方法:2008年1月1日~2010年10月31日に、5つのアメリカ国内ないし国際航空会社から、医師が指揮する医療通信センターに通報があった医学的緊急事態の記録を調査しました。その中で、頻度の高い疾患、機内で提供された医学的支援の種別を調査し、予定外の着陸空港変更、病院搬送、入院発生率、およびこれらに関連する因子を調べ、死亡率を算出しました。

 

結果:医療通信センターへの通報のあった飛行中の医学的緊急事態は合計11920件でした(飛行604回あたり 1件)。このうち、頻度の高かった疾患は、失神または失神前状態(37.4%)、呼吸器症状(12.1%)、悪心または嘔吐(9.5%)でした。心肺停止が最も死亡数が多く、それ以外では失神または失神前状態の死亡が4人と多く認められました。その他の飛行中の医学的緊急事態の48.1%で、乗り合わせた医師が医療支援を行い、そのうち7.3%では着陸空港が変更されました。緊急着陸をおこなう確率は、医師が救援した場合は9.4%(95%信頼区間 8.7〜10.2)、救急医療サービス(EMS)提供者による救援で9.3%(95%信頼区間6.8〜11.7)と高かったものの、乗務員のみで対処した場合は3.8%(95%信頼区間3.1〜4.5)と低い結果でした。多変量解析では、緊急着陸との強い相関があったファクターは自動体外式除細動器(AED)の使用(オッズ比3.02、95%信頼区間1.89〜4.83)でした。

救助した患者のうち、使用頻度が最も高かったのは酸素で49.9%でした。次いで0.9%生食水の点滴が5.2%、アスピリンが5.0%でした。飛行後のフォローアップデータを入手できた10914人のうち、25.8%が病院に搬送され、8.6%が入院、0.3%が死亡していました。入院の原因として、脳卒中の可能性(オッズ比3.36、95%信頼区間1.88~6.03)、呼吸器症状(オッズ比 2.13、95%信頼区間1.48~3.06)、心臓症状(オッズ比 1.95、95%信頼区間1.37~2.77)の頻度が高く認められました。

 

以上から、飛行機内での医学的緊急事態の大半は失神、呼吸器症状、消化管症状によるもので、医師が任意で医療行為を行う頻度が高かったようです。着陸空港の変更または死亡を起こした医学的緊急事態は少数例であり、飛行中に医学的緊急事態が発生した乗客の4分の1は病院で追加の医学的評価を受けていました。

ちなみに、機内で行う医療処置の推奨事項も掲載されていましたw

こういう場面には当たりたくないですが、もしもの時に知っておくと良いと思って読んでみました。

そして論文を読みながら、日本でもアメリカのような「善きサマリア人の法」を早急に整備して欲しいと思いました。良かれと思って名乗り出ても、救命できなかった場合、その都度患者家族から訴えられてしまっていたら、そのうち名乗り出る医師がいなくなっちゃいますもの。。 (小児科 土谷)

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