院長先生のブログ
COVID-19 急性期合併症㉓
急性期の神経合併症が生じる機序のうち「4)血栓形成」に関連した論文(Brain, awac151, July 5, 2022(doi.org/10.1093/brain/awac151))を紹介します。
COVID-19剖検脳を用いて神経病理学的変化を明らかにし、その病態機序を検討した論文です。
パンデミック第一波で死亡した9例が対象となりました。いずれも感染後短期間で死亡した成人例で、一部は呼吸器への影響が少ない状態で突然死していました。
その結果、全例に脳実質への血清蛋白の漏出にて評価される多巣性血管障害が認められ、広範な内皮細胞の活性化を伴い、血小板凝集と微小血栓が血管内腔に沿って内皮細胞に付着していました。内皮細胞と凝集血小板には古典的補体系の活性化を伴う免疫複合体が確認されました。
血管周囲の細胞浸潤は、主にマクロファージと少量のCD8+ T細胞で、CD4+ T細胞とCD20+ B細胞は稀に存在するのみでした。アストログリオーシスも血管周囲で顕著でした。後脳(小脳,橋)ではミクログリア結節を多く認め、局所的な神経細胞喪失と神経細胞貪食に関連していました。
以上から、補体活性化と免疫複合体形成による内皮細胞障害が最初に生じ、ついで血管漏出、血小板凝集、神経炎症およびグリア細胞活性化が生じるものと考えられました。
血小板凝集に関連した論文を紹介しました。
血管内皮細胞における補体活性化、免疫複合体形成が神経障害のトリガーとなることから、免疫複合体に対する治療法も検討しなければなりませんね。 (小児科 土谷)