院長先生のブログ
犬を飼うことの意外な効果
犬や猫を飼育することが認知症発症リスクにどのような影響を及ぼすのかを検討した日本からの論文(Prev Med Rep 2023 Oct.7)を紹介します。
層別および無作為に抽出した11,194人の高齢者を対象に検討し、犬・猫の所有については「現在」または「過去に一度もない」に分類しました。
その結果、現在犬を飼っている人(8.6%)は、過去に犬を飼ったことがある人、飼ったことがない人と比較して、認知症になる確率(OR)は0.60(95%CI:0.37-0.977:認知症発症リスクが40%有意に低かった)であることが分かりました。猫の飼育に関しては、対応するORは0.98(95%CI:0.62-1.55)であり、猫を飼っているか否かは認知症発症リスクに影響を与えませんでした。
そして、定期的な運動習慣のある、犬を現在飼っている人のORは、運動習慣のない犬を過去に飼ったことがある人、飼ったことがない人に比べて0.37(0.20-0.68)でした。
さらに、現在犬を飼っていて社会的孤立がない人のORは、過去に犬を飼っていて社会的孤立がある人とない人に比べて0.41(0.23-0.73)でした。
犬の飼育は背景因子を調整した後でも認知症の発症を抑制する効果があることが分かりました(特に、運動習慣があり、社会的孤立感のない犬の飼い主は、認知症のリスクが有意に低い)。
犬を飼うことは、その後の認知症発症のリスクを下げるみたいです(猫にはその効果は認められない)。
犬を散歩に連れて行くことにより発生する、運動習慣や周囲の人とのコミュニケーションが良い方向に影響するということでしょうかねw (小児科 土谷)