院長先生のブログ
カタツムリの落とし穴

梅雨の風物詩には色々ありますが、そのひとつにカタツムリもあげられます。
(最近、あんまり見かけませんが・・・)
実はこのカタツムリ、ナメクジなど他の軟体動物と同様、いくつかの寄生虫の中間宿主になり得るので要注意です。生での摂食などで幼虫(広東住血線虫等)が体内に取り込まれると寄生虫症を起こしてしまいます。
今回は広東住血線虫による広東住血線虫症を例にします(広東住血線虫は主に南太平洋諸地域で発見されていますが、沖縄などの日本国内でも発見されています)。
この広東住血線虫症は、病初期に嘔吐、腹痛、下痢といった消化器症状を呈するほかに、虫体に対する炎症反応による好酸球性髄膜炎に関連する症状、眼筋麻痺・斜視・複視・視野異常といった眼症状、痙攣・筋力低下・知覚異常・腱反射異常・脳神経障害など様々な中枢神経症状を呈することが知られています(髄膜炎の割に高熱が出にくい、二峰性の経過を示すなど特徴的な経過が知られています)。ちなみに潜伏期は約10~14日。
旅行歴と食事摂取歴でアタリをつけ、髄液検査で好酸球増多を確認できれば、診断の手掛かりとなるでしょう(好酸球性髄膜炎は稀ですし)。。
これといった特効薬はなく、時には重症化したり、後遺症を残した例も報告されていたりする(稀ですが死亡例も報告されている)ので、やはり「予防が一番!」です。
「カタツムリやナメクジには触らない、食べない」
「排泄物で汚染されている可能性がある野菜はよく洗う」
「流行が報告されている外国(主に南太平洋地域)の旅行中、旅先で出されたサラダなどは避ける」 etc
こんな感染症、小児には起こらないでしょう?と思われる方も多いと思いますが、実は日本小児科学会誌にきちんと症例報告(日本小児科学会誌. 2005;106(7):839-44.)されています。普段から、ちょっとしたことに気をつけるだけで感染リスクを下げることができるので、覚えておいても損は無いと思いますw (小児科 土谷)