院長先生のブログ
アトピー性皮膚炎 保湿剤⑤
昨日の最後に、市販の保湿剤を使用する際は食品成分が含まれた保湿剤は避けるように書きましたが、それに関連した補足説明の論文(N Engl J Med. 2003 Mar 13;348(11):977-85. )です。
Factors Associated with the Development of Peanut Allergy in Childhood | NEJM
ピーナッツアレルギーの家族歴およびアトピー以外の危険因子について調べた論文です。
13,971 人の就学前児童を対象とした、地域で規定したコホート研究である「エイボン州における親と子の経時的研究(Avon Longitudinal Study of Parents and Children)」のデータを用いました。
ピーナッツアレルギー歴のある就学前児童と二重盲検で行ったピーナッツアレルギーテストに反応したサブグループを確認し、全コホートに関するデータを前向きに収集した後、ピーナッツに反応する小児の親、および 2 つの対照群の親とを問診することで詳細な情報を後ろ向きに収集しました。
その結果、49 人の小児でピーナッツアレルギーの既往がありました。ピーナッツ投与試験を行った 36 人中 23 人でピーナッツアレルギーが確認されました。
母親の食事による出生前感作の証拠は認められず、臍帯血にピーナッツ特異的 IgE は検出されませんでした。
ピーナッツアレルギーは、豆乳または豆乳製品の摂取(オッズ比 2.6;95%信頼区間 1.3~5.2)、関節と皮膚の皺での発疹(オッズ比 2.6;95%信頼区間 1.4~5.0)、毛細管出血と痂皮形成を伴う発疹(オッズ比 5.2;95%信頼区間 2.7~10.2)と独立して関連していました。
問診データの分析では、ピーナッツアレルギーとピーナッツオイルを含む皮膚用製剤の使用との間に、有意な独立した関係が認められました(オッズ比 6.8;95%信頼区間 1.4~32.9)。
以上から、小児におけるピーナッツ蛋白質への感作は炎症を起した皮膚にピーナッツオイルを塗布したことにより生じる可能性があることが分かりました(大豆蛋白質との関連は共通のエピトープを介した交差感作により生じているのかもしれません)。
ということで、食品成分が含まれた保湿剤は避けておいた方が無難かと思います。 (小児科 土谷)